こんにちは、ひばり広報の chihiro です。
「訪問看護は、一人で判断しなければいけないのでは」「自分に続けられるだろうか」 —— 訪問看護に関心はあっても、この2つの不安で足が止まってしまう方は、きっと少なくないと思います。
今回お話を伺ったのは、看護師の小山さん。まさにその不安を抱えたまま訪問看護に踏み出し、いまはひばりで働いていらっしゃいます。不安がどう解けていったのか、そして訪問看護で出会った「生活を見る」というやりがいについて、飾らない言葉で聞かせていただきました。

「天気のような人」 – 畑と、家族と
取材の終盤、「ご自身を一言で表すと?」と伺ったとき、小山さんはこう答えてくださいました。
天気のような人、でしょうか
明るい日もあれば、少し曇る日もある。ときには台風のような日も、と笑っておられました。けれど、どんなときも無理に飾らず、その日の自分に素直に向き合っている —— そんな自然体の方だというのが、お話ししている間の印象でした。
言葉が特別に強いわけではありません。それでも、畑の話、ご家族の話、ご利用者との思い出を、飾らず楽しそうに話される姿に、場の空気が少し明るくなる。天気が晴れていくように、周りの人の気持ちも少し軽くしてくれる方なのだと感じます。
お休みの日は、知人の方から借りている畑で季節の野菜や山菜を育てるのが楽しみだそうです。
知り合いの方から借りている畑があって、今年は山菜もいっぱい植えました
今年はブロッコリーが大きく育ち、きゅうりやトマトも実ったとのこと。いつかはお米も作ってみたい、と話してくださいました。土に触れ、収穫を心待ちにし、家族と食卓を囲む。そんな日々の暮らしを大切にされている姿は、訪問看護での関わり方にもつながっているように思います。
先入観でご利用者の気持ちを決めつけるのではなく、天気を読むように、その日の表情や空気を感じ取る。そして必要なときには、そっとそばにいる。小山さんの看護は、この「素直に生きる」人柄から生まれているのかもしれません。
看護師を目指した原点
看護師を目指されたきっかけは、ご家族との経験だったといいます。
大切な方との出来事を通して、「病気だけではなく、その人の生活を支える看護がしたい」という思いが芽生えたそうです。医療的なことができるようになりたい、けれどそれだけではなく、暮らしのほうも支えられる人になりたい —— その両方を、最初から持っていらっしゃった方なのだと感じます。
その思いを抱えて病院で経験を積み、その後、訪問看護という新しいフィールドへ踏み出されました。
「一人で判断するのでは」 – 訪問看護を始めるときの不安
訪問看護に関心はあったものの、実際に踏み出すときには不安もあったといいます。
小山さんご自身の言葉でも、当時をこう振り返っておられました。
最初は不安で不安でした。一人で判断しなければならないのではないか、続けられるかな、というのは結構ありました。
けれど実際に働いてみると、そこには支えの仕組みがありました。
毎日カンファレンスをしていますし、わからないことがあれば、看護師の先輩や部長に質問して。オンラインでつないで、いろいろ教えてもらっています。わからないことも、ちゃんと教えてもらえます。
一人で訪問していても、一人で抱え込む仕事ではない。管理者や先輩、多職種と相談しながら進められることが、安心感につながっている —— 入職して3ヶ月という時点だからこそ、不安が解けていく過程を鮮明に話してくださったのだと思います。
一人で訪問しても、一人で抱える仕事ではない
訪問看護は、一人でご利用者のお宅へ伺う仕事です。けれど、その方を支えているのは決して一人ではありません。
お家にケアマネジャーさんも来てくれる、リハビリの方も来てくれる、お薬は薬剤師の先生が来てくれる。訪問するのは一人ですけど、お家にみんな来てくれるので、安心なんです。だから、すごく安心して働けます。
医師、ケアマネジャー、リハビリスタッフ、薬剤師。それぞれの専門職が情報を共有しながら、一人のご利用者を支えています。そしてそれぞれの領域は、その専門職に委ねられている、と小山さんは話します。
それぞれの方に専門の視点があるので、専門分野は尊重されます。ケアマネジャーさんはサービス調整、リハビリのことはリハビリの方に。やっぱり専門ですから。
「安心して働ける」という言葉が、この日、何度か繰り返されました。その安心は、職員だけのものではなく、ご利用者にとっての安心とひと続きになっている —— そのことを、小山さんは同じ温度で話されていたのが印象的でした。

苦手だからこそ、顔を見に行く
意外だったのは、小山さんが「自分から人と話すのは得意なほうではない」と話されたことでした。初めて会う方に何を話せばいいのか、どう声をかければいいのか。営業に出る前には、少し緊張することもあるといいます。
それでも小山さんは、あえてケアマネジャーさんや病院、地域の関係者のもとへ足を運ばれます。
人と話すと緊張してしまうんです。だから営業に行きます。ちょっと知っていると、そのぶん話しやすいので。
一度その方の顔を見て、どんな方なのかを知っていたほうが、次に話しやすくなるから。名前だけを知っている相手と、実際に会って表情や雰囲気を知っている相手とでは、相談のしやすさが違います。
「この人はこういう話し方をするんだ」「この方には、こう伝えると分かりやすいかもしれない」「前にお会いしたから、次は少し話しかけやすい」 —— そんな小さな積み重ねが、関係づくりにつながっていきます。
地域の会議に参加する機会もあるそうです。
民生委員さんなど、いろいろな職種の方が集まる会に参加する機会がありました。難しいケースを共有して対応されていて。この地区にどういう方がいて、どのようなことをサポートしているのかを知ることができました。
小山さんにとって営業は、何かを売り込む時間ではありません。
一方的な営業ではなくて。
ひばりを知ってもらうこと。相手の顔を知ること。そして、困ったときにお互い相談しやすい関係をつくること。ご利用者を支えるためには、看護師だけでなく、ケアマネジャー、病院、リハビリ職、薬剤師など、さまざまな方との連携が欠かせません。だからこそ、日頃から顔の見える関係をつくっておくことが、いざというときの安心につながります。
苦手だから避けるのではなく、苦手だからこそ一歩出てみる。 その姿勢にも、小山さんらしい素直さと前向きさが表れているように思いました。
「海を見たい」という願いを叶えた日
特に印象に残っているご利用者がいらっしゃるといいます。その方の願いは、「もう一度、海を見たい」。
看護師だけでは実現できない願いでした。医師やリハビリスタッフをはじめ、多職種が力を合わせて支援にあたられたそうです。
みんなで協力し合って。リハビリの方も最後まで丁寧に入ってくださって。顔なじみの方が来ると、やっぱり違うんです。
ご利用者の「やりたい」という思いを中心に、みんなで方法を考え、最後まで寄り添うことができた。病気だけを見るのではなく、その人の人生や願いを支える。それこそが、訪問看護ならではのやりがいでした。
「生活を見る看護」ができる場所
病院では、治療や退院までを支えることが中心になります。一方、訪問看護では、その方がどんな暮らしを送り、どんなご家族に囲まれ、何を大切にして生きているのかまで知ることができます。
生活全体を見ることができる。それが訪問看護です。
ただし、それは「病院より良い」という単純な話ではない、とも話されました。
在宅療養は、なかなか思うようにいかないことも多いです。24時間、看護師や介護の方がずっとそこにいられるわけではないので、心配なところはあります。
だからこそ、小山さんが大切にされているのが「話を聞く時間」でした。
ご本人とご家族のお話を聞くと、そのぶん時間はかかるんですけど。そこはとても大事にしています。
思うようにいかないことがある。時間もかかる。それでも、その方の人生全体を見るために、話を聞く時間を手放さない。ご利用者の人生に寄り添い、その人らしい暮らしを支える。小山さんが訪問看護を選んだ理由が、そこにありました。

わからないことは、わからないと言う
仕事のうえで大切にされている「自分らしさ」を伺うと、小山さんはこう話してくださいました。
わからないことは、わからないので助けてください、と言うようにしています。完璧ではなくて、人間のことなので。
聞くことに、ためらいがないわけではないそうです。
これって簡単なことなのかな、質問しちゃいけないのかな、と思うこともあるんですけど。それでも素直に聞くようにしています。
そして、これから一緒に働きたい方について伺うと、こんな答えが返ってきました。
「現実をきちんと把握して受け止めて、それでもやっぱり前向きに、関わり続けられる。そういうことを一緒にしていきたいと思います。
「伴走なんだな」と、小山さんはぽつりと付け加えられました。完璧でいることではなく、わからないと言えること。強くあることではなく、前向きに関わり続けること。 訪問看護の現場に立つ人が大切にしている「らしさ」として、とても具体的な言葉だと感じました。
これから訪問看護を目指す方へ
最後に、訪問看護に関心はあるけれど踏み出せずにいる方へ、メッセージをお願いしました。
ひばりは、忙しいときでも、すごく教えてくれます。助けてください、教えてくださいと言えば、不安なく訪問看護師になることはできると思います。
経験がなければダメ、ということはありません。技術的なスキルが不安です、と口に出しても大丈夫ですし、経験のある方が多いので、相談しながら進められます。
「訪問看護は、一人で頑張る仕事ではありません」 —— 困ったときには相談できる仲間がいて、多職種で支え合いながら、一人ひとりのご利用者に向き合える環境があります
「もっとご利用者一人ひとりと向き合いたい」「生活に寄り添う看護がしたい」。そんな想いを持つ方にとって、訪問看護はきっと、新しいやりがいに出会える場所になるはずです。
取材を終えて
小山さんが「天気のような人」とご自身を表されたとき、正直、少し驚きました。多くの方は、自分を表す言葉として、もう少し前向きで一貫したものを選ばれるように思うからです。けれどお話を伺っていくうちに、その言葉の意味がだんだん分かってきました。晴れの日も、曇りの日もある。それを隠さずに認めたうえで、「今日の1日、きちんと訪問できるように」と朝に整える
その正直さと律しかたが、小山さんの自然体を支えているのだと思います。
いちばん印象に残ったのは、「わからないことは、わからないので助けてください」という言葉でした。看護師として経験を重ねてこられた方が、「これって簡単なことなのかな、質問しちゃいけないのかな」と迷いながら、それでも素直に聞くようにしている、と話してくださる。訪問看護は一人でご自宅に伺う仕事だからこそ、「聞ける」ということが、そのままご利用者の安全につながっているのだと、あらためて感じました。
そしてもうひとつ。「人と話すのは得意ではない」と言いながら、だからこそ相手の顔を見に行く、というお話です。苦手を克服しようとするのでもなく、避けるのでもなく、「知っていると話しやすいから」という、とても実際的な理由で一歩を出す。この積み重ねが、ケアマネジャーさんや病院との「顔の見える関係」になり、いざというときにご利用者を支える力になっていく。派手さはないけれど、いちばん確かなやり方なのだと思います。
畑の話をされているときの小山さんの表情と、ご利用者の「海を見たい」という願いを話されるときの表情が、よく似ていたことも書き添えておきたいと思います。育てて、待って、実ったものを分け合う。暮らしの中で大切にされていることと、看護の現場で大切にされていることが、同じところでつながっている方なのだと感じた時間でした。
取材・執筆:ひばり広報推進室 chihiro
取材協力:ひばり訪問看護ステーション 小山さん(看護師)
※掲載写真はすべて、ご本人の同意のもと撮影しています。
