【ひばりのOT #1】「教えてください」という姿勢で | 一度ひばりを離れて病院に勤め、それからまた戻っきた理由

こんにちは、ひばり広報の chihiro です。
「訪問リハビリは、病院とどう違うのだろう」「一人でご自宅に伺うのは、やっぱり不安なのではないか」 —— 訪問という働き方を考えるとき、多くの方が最初にぶつかる問いだと思います。
今回お話を伺ったのは、ひばりの作業療法士(OT)・佐藤さん。精神科の病院でキャリアを重ねたのち訪問リハビリへ移り、一度ひばりを離れて病院に勤め、それからまた戻ってこられたという経歴の持ち主です。外を経験したからこそ見えたこと、そして今、ご利用者と向き合ううえで大切にされていることを、率直に聞かせていただきました。

休日は、家族との時間とサッカー観戦

まずは、お休みの日の過ごし方から伺いました。

佐藤OT

だいたい子どもと遊んでいるか、家のことをしていますね。

一緒に出かけることも多いそうです。そしてもうひとつ、最近楽しみにされていることがあると教えてくださいました。

佐藤OT

あまり趣味はないんですけど、サッカーを見るんです。昨日も4時から起きて見ていました。

早朝から起きて試合を見る、という話をされるときの表情が、とても自然であたたかいものでした。仕事では穏やかにご利用者と向き合われている佐藤さんの、もうひとつの顔を垣間見たような気がします。

「作業療法士」という仕事に出会うまで

佐藤さんが最初に関心を持たれたのは、実は理学療法士(PT)という仕事だったといいます。

佐藤OT

学生のころに運動をしていて、仕事を探していたときに理学療法士という仕事を知ったんです。ただ当時は学校も少なくて、難しいなと思って。いろいろ調べているときに作業療法士という仕事があって。たまたま家の近所に精神科の病院があったんですけど、体だけじゃなくて、そこにもリハビリの人がいるんだ、と知って。それでOTという仕事をやってみようかなと思いました。

体に関わる仕事として関心を持ったリハビリ職。その入口から一歩進んだところで、「心の領域にもリハビリがある」という発見があった。OTという職種の広がりが、進路を決めるきっかけになったのだそうです。

精神科での経験が、いまの訪問につながっている

その後、佐藤さんは実際に精神科の病院でOTとして働かれることになります。その経験は、いまの訪問リハビリにどうつながっているのでしょうか。

佐藤OT

作業療法士としては珍しいかなと思うんですけど、私は精神科の病院で働いていたんです。そこから訪問に来たので、ほかの作業療法士さんと比べると、見る視点がちょっと違うのかもしれません。訪問のリハビリは、ひばりに限らず、体以外にメンタル的なところも見ますから、そういった経験は活きているのかなと思います。

訪問の現場では、身体の状態だけを見ていればよいわけではありません。その方の気持ち、これまでの人生、ご家族との関係、暮らしの背景 —— さまざまな要素が絡み合ったところに、リハビリが置かれています。精神科で培われた「その人全体を見る視点」 が、在宅の現場でそのまま強みとして働いている、ということなのだと思います。

訪問に出て、最初に感じたこと

とはいえ、病院から訪問へ移ることは、決して地続きの一歩ではなかったようです。入職前に想像していたことと、実際の現場との違いについて伺うと、佐藤さんは正直に話してくださいました。

佐藤OT

体のことは勉強してきたこともある程度の経験もありますが、やっぱり難しいなと。それに、病院と比べて一人でやらなきゃいけない。現場では本当に一人で、身近に誰かがいるわけじゃないので、最初はちょっと不安だったな、というのはありますね。

「一人で伺う」という訪問の形。それを、佐藤さんは「不安だった」という言葉で率直に振り返られました。いまベテランとして現場に立たれている方が、その入口では確かに不安を抱えていた —— このことは、これから訪問を考えている方にとって、いちばん聞きたい話のひとつではないかと思います。この不安に、ひばりの環境がどう応えているかは、記事の後半で改めて伺っています。

なお、佐藤さんがひばりを知ったきっかけは、仙台への転居でした。

佐藤OT

もともと県外にいて、仙台に引っ越してこようと思ったときに探していて、ひばりがあったんです。もともと訪問の仕事をやりたかったので、ホームページを見て、アットホームな雰囲気があっていいなと思って。ここで働かせてもらえないかな、と応募しました。

やっぱり、その人の生活が見たかった

そして佐藤さんは、一度ひばりを離れられます。別の病院からのお誘いがあってのことでした。

佐藤OT

別の病院からお誘いがあって、一度辞める形になって病院で働いたんですけど、心の中で何か違うなと思って。病院が悪いということではなくて。入院だと、その患者さんの一部しか見られないんです。それはそれでいいのかもしれないですけど、私はもともと訪問がやりたかった、生活を見たかったので。働いてみて、やっぱり訪問のほうが自分はやりたいなと思って、それで戻ってきた感じです。

病院が悪いということではなくて

この一言を、佐藤さんは丁寧に付け足されました。病院には病院にしかできない支援があります。その上で、ご自身がやりたいことはどちらなのか。その問いに、実際に働いてみて答えを出された、ということなのだと思います。

病院と自宅の違いについても、具体的に話してくださいました。

佐藤OT

平らな床を歩くのと、家の中では段差も違いますし、病院ならナースコールを押せば看護師さんが来てくれますけど、家にナースコールはありません。その代わり、介護をされているご家族に『こういうふうにしたほうがいいですよ』とお伝えできると、その方の生活がもう少しよくなるかなと思うんです。そういう在宅というところに興味があって、戻ってきました。

整った床、呼べば人が来る環境。それが「ない」ことは、訪問の難しさであると同時に、関われる範囲がご本人の暮らしそのものへ、そしてご家族へと広がっていくということでもある。佐藤さんのお話からは、その両面が同じ重さで伝わってきました。

もう一度、ひばりを選んだ理由

再び訪問リハビリに関わりたいと考えたとき、佐藤さんが選んだのは、やはりひばりでした。一度外の環境を経験されたことで、改めて見えてきたものがあったといいます。

佐藤OT

訪問看護ステーションといいながら、訪問看護以外のところにもすごく取り組んでいるじゃないですか。地域の体操教室とか、セミナーも会社独自でやっていたり。そういう取り組みは、なかなかないところだなと思います。

ずっと同じようなことをしているよりも、新しいことにチャレンジしているほうが刺激をもらえますし、自分も勉強になる。そういう環境に身を置けるのがすごくいいなと思って、やっぱりひばりで働きたいなと思いました。

もうひとつ、佐藤さんが繰り返し口にされたのが、職場の空気についてでした。

佐藤OT

若い人が多いので、元気があるなという感じで。その元気はすごくいいなと、いつも思っています。

一度離れたからこそ、訪問リハビリの面白さがはっきり見えた。外を経験したからこそ、ひばりの取り組みが見えた。「戻ってきた」という選択そのものが、比較を経た答えなのだと感じます。

訪問の現場で感じる、OTの面白さ

訪問の現場でOTとしての面白さを感じるのは、どんな瞬間なのでしょうか。

佐藤OT

体だけじゃなくて、精神面とか、その人の全体像、生活を見ながら関わっていきます。生活となるとパターンが決まっていなくて、『こういう人には必ずこれ』ではなく、その人に合わせていろいろな選択肢の中から考える。即興性というか、それがハマったときは面白いですね。

同じ病名でも、暮らしている環境、ご家族の状況、生活のリズム、大切にされていることは一人ひとり違います。だから「この人には何が合うのか」を、そのつど考えて組み立てていく。決まった正解がないことを、佐藤さんは負担ではなく面白さとして語られていたのが印象的でした。

「教えてください」という姿勢で

ご利用者と関わるうえで大切にされていることを伺うと、佐藤さんは少し考えてから、こう話してくださいました。

佐藤OT

先入観にとらわれないことですね。『この人はこういう病気だからこうだ』ではなくて、何に困っているのか、どうなりたいのか。上からでもなく、対等よりもう少し下で、『教えてください』という感じで関わることは、すごく大切にしています。日々、勉強させていただいているので。

「その人らしい生活を支えるために意識していること」を重ねて伺っても、答えは同じところに戻ってきました。

佐藤OT

本当に、教えていただいているというか。私というよりは利用者さんに教えていただいて、私も勉強する。教えていただくというスタンスを、けっこう大事にしています。

訪問は、ご自宅というとてもプライベートな場所に入らせていただく仕事です。だからこそ、一方的に「こうしたほうがいい」と伝えるのではなく、その方の暮らし方や思いを教えていただきながら関わる。「対等よりもう少し下で」 という言葉の選び方に、佐藤さんの姿勢がそのまま表れているように思いました。

同じ方向を向くために、こまめに共有する

訪問リハビリは、一人で完結する仕事ではありません。看護師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、ケアマネジャー、ヘルパー。
さまざまな職種が同じご利用者に関わります。多職種で連携するうえで大切にされていることを伺いました。

佐藤OT

なるべく早めに情報共有をして、利用者さんが困らないようにしたいですね。『この人には言ったのに、あの人には伝わっていないんだね』ということには、なるべくしたくないなと思っています。

情報がずれてしまったときに困るのは、支える側ではなく、ご利用者ご本人。だからこまめに共有する —— 理由がとてもはっきりしていました。

ちなみに、「チームの中でどんな役割を担うことが多いですか」と伺うと、「特に役割はないと思います」と笑っておられました。ご自身の立ち位置を大きく語らないところも、佐藤さんらしいところなのだと思います。

一人で抱え込まなくていい – ひばりで働く魅力

記事の前半で、佐藤さんが「最初は一人で訪問することが不安だった」と話してくださったことに戻ります。訪問リハビリや在宅の現場に不安を感じている方へ、いま伝えたいことを伺いました。

佐藤OT

研修もしっかりしていますし、同行も皆さんすごく丁寧にしてくださるので、不安を感じていても、フォローはたくさんしていただけます。ひばりはリハビリ職が多くて、いろんな経験を持った方がいるので、相談できる状況なのはいいかなと思います。

訪問の現場では、判断に迷う場面も、一人では抱えきれない場面もあります。そのときに、いろいろな経験を持つスタッフに相談できること。「一人で伺う仕事」であっても、「一人で抱える仕事」ではない —— 佐藤さんが感じておられるひばりの環境は、そういうものなのだと受け取りました。

これから磨いていきたいこと

これからOTとしてさらに活かしていきたいことを伺うと、精神科での経験の、もう一つの側面について話してくださいました。

佐藤OT

精神科というと精神疾患をイメージすることが多いと思うんですが、私はどちらかというと、いま多い発達障害のほうを勉強することが多かったんです。そういったところに、もう少しうまく関われたらいいなと。特に子どもですね。教育の場面も含めて、OTとしてうまく関われる機会とか、力が身についていったらいいのかなと思っています。

小児・思春期、発達、不登校といった領域に関わってこられた経験。その視点を、これからの訪問や地域での支援にも活かしていきたい、と考えておられます。

そして、その先にある「ご家族」への眼差しについても、静かに語ってくださいました。

佐藤OT

本人がいちばん困っている、とはよく言いますけど、個人的には、周りの方も困っていると思うんです。お母さんは大変じゃないですか。名前を書いたり、ご飯を作ったり、洗濯をしたり。それだけでも大変なのに、学校に行かない、病院にどう連れて行けばいい、となる。そういうところに、いつか支援ができたらいいなと思いながらやっています。

困っているのはご本人だけではない。その周りにいる方も、同じように困っている。「教えてください」という姿勢の射程が、ご本人だけでなくご家族にまで自然と伸びていることが、この語りからよく伝わってきました。

これからひばりで働くことを考えている方へ

最後に、これから入職を考えている方へのメッセージをお願いしました。

佐藤OT

いろんなことにチャレンジして、新しいことを学べる環境です。訪問が初めてという方でも不安はあると思いますけど、不安を感じさせないようなフォローや研修もあります。すごくいい環境だと思うので、ぜひ。

ご自身が「最初はちょっと不安だった」と振り返り、一度外に出て、それでも戻ってこられた方の言葉だからこそ、押しつけではなく、静かに届くのだと思います。

「人生によりそう」を、あなたはどんなかたちにしたいですか

ひばりでは、ご利用者の暮らしによりそうリハビリを一緒に担ってくださる作業療法士・理学療法士・言語聴覚士の仲間を募集しています。

「精神科や小児の経験しかない自分に、在宅でやっていけるだろうか」「一人でご自宅に伺うのは、やっぱり不安」 —— そんな段階のご相談から、どうぞお気軽にお寄せください。佐藤さんが語ってくださったように、不安があるまま入ってきて構わない環境を、私たちも大切にしています。

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取材を終えて

あっという間のインタビューのなかで、佐藤さんは何度も「教えていただいている」という言葉を使われました。16年目のOTとして、精神科でも訪問でも経験を重ねてこられた方が、ご利用者に対して「対等よりもう少し下で」と言い切られる。その姿勢が、取材中の間、いちばん静かに、いちばん強く残りました。

もうひとつ印象に残ったのは、率直さです。

『最初はちょっと不安だった』
『心の中で何か違うなと思って』
『特に役割はないと思います』

ご自身を大きく見せる言葉が、ひとつもありませんでした。一度ひばりを離れられたことについても、隠さず、けれど前の職場を悪く言うこともなく、ただ「自分がやりたいのはこちらだった」と話してくださいました。比較して、選び直した人の言葉には、迷いのなさとは違う種類の説得力があるのだと感じます。

そして、お話が発達領域やご家族のことに及んだとき、佐藤さんの言葉数が少し増えました。「本人がいちばん困っている、とはよく言いますけど、周りの方も困っていると思うんです」。支援の対象を、目の前の一人から、その方を取り巻く暮らし全体へ。それは、ひばりが大切にしている「人生によりそう」という言葉と、まっすぐ重なるものでした。

私自身、訪問リハビリと聞くと、どこか「しっかり訓練をする」張りつめた場面を想像していたところがありました。けれど職員の皆さんのお話を伺うたびに、その手前にある会話や、日々の小さなやり取りこそがこの仕事の中心にあるのだと教えられます。今回もまた、そのことを確かめる時間になりました。佐藤さんがこれから関わっていきたいと話されていた領域も含め、また折に触れてお話を伺っていきたいと思います。

取材・執筆:ひばり広報推進室 chihiro
取材協力:ひばり訪問看護ステーション 佐藤さん(作業療法士)
※掲載写真はすべて、ご本人の同意のもと撮影しています。