【職員インタビュー】「踏み込みすぎない」という、よりそい方 | 生活を尊重する訪問看護を、チームで支える

こんにちは、ひばり広報の chihiro です。
訪問看護の現場では、食事も、清潔も、お部屋の様子も、一日の過ごし方も —— その人の暮らしがまるごと見えてきます。医療の視点から「もう少しこうした方が体は楽になるのに」と感じる場面も、少なくありません。
それでも「本人がいいと言うなら、それ以上は踏み込まない」。そう静かに話してくださったのが、今回お話を伺った看護師の吉川さんです。病院で6年勤めたのち訪問看護へ。ひばりで管理者を務めた時期もある、経験を重ねた一人です。生活を尊重するというケアの姿勢、業務部に支えられて看護に集中できる環境、そして「不安はチームで越えていける」というリアルを、率直に伺いました。

休日は、好きなことを大切にする時間

まずは、吉川さんの素顔から。休日はどんなふうに過ごしているのか伺うと、思いがけずアクティブな顔が見えてきました。

吉川Ns

インプロっていう、即興のお芝居の練習に行ったりとか。あとはパーソナルジムに行ったり、ジェラート屋さん巡りをしたり。最近は出かけることが結構多いですね

ここ数か月ハマっているのは、書道だそうです。

吉川Ns

知り合いに書道の先生がいて、その先生がインスタに一言を書いているんです。それを写すのを、3か月くらい続けていて

意外なことに、子どもの頃は得意ではなかったといいます。

吉川Ns

小さい頃は習字の授業が大嫌いだったんです。でも大人になってその先生と出会って —— 看板とか、かっこいい字を見ると『こういうのが書けたらかっこいいな』ってふと思って。先生のまねをして始めたら、楽しくて続いています

苦手だったはずのことが、いまは「つい続けてしまうこと」になっている。その軽やかさが、吉川さんの人柄をよく表しているように感じました。

看護師を目指したきっかけ – 高校生の頃に見た、一つのニュース

吉川さんが看護師という仕事を意識したのは、高校生のときに見たニュースがきっかけでした。

吉川Ns

看護師が足りなくて、現場の看護師が疲れてしまって、医療事故が増えている —— そんなニュースを見て、『じゃあ、なろうかな』という感じで看護学校に行こうと思ったんです

その語り口は、気負いのない、まっすぐなものでした。「人の役に立ちたい」という強い使命感が出発点だった、というわけではないと、吉川さんは正直に振り返ります。

吉川Ns

正直、人の役に立ちたいという気持ちがそんなにあったわけではなくて。仕事に困らないかな、安定しているかな、という現実的な理由もあったと思います

きれいごとにしない、その正直さ。社会の中で必要とされている仕事を、自分なりに受け止めたこと —— それが、吉川さんの看護師としての始まりでした。

生活を支える仕事に惹かれて – 病院での6年を経て、訪問へ

訪問看護に関心を持ったのは、看護学校時代の見学がきっかけでした。

吉川Ns

学生のときに見学があって、そのときに『すごくいいな』と思ったんです。生活のお手伝いをするって、いいなって

卒業してすぐにでも訪問看護をやりたい —— そう思うほどの気持ちがありました。けれど、学校の先生からの助言で、まずは病院で経験を積む道を選びます。

吉川Ns

『まず病院で経験を積んだ方がいいよ』と言われて、病院で働いていました。でも、訪問看護をやりたいという気持ちは、ずっとあって

病院での勤務は6年間。生まれたときから障害のある方が大人になり療養を続ける重症心身障害の病棟から始まり、その後は神経内科の病棟へ。ALSやパーキンソン病、脳梗塞後の方など、いまの訪問看護にもつながる方々と向き合ってきました。

吉川Ns

そういう経験は、今の訪問看護にもすごく活きているなと思います

「やりたい」という気持ちを抱え続けた6年間。その時間は、回り道ではなく、いまの吉川さんを形づくる土台になっていました。

最初に戸惑ったこと – 在宅の精神科看護と、多職種とのつながり

念願の訪問看護の現場に入って、最初に戸惑ったのは、自宅で暮らす精神科のご利用者さんとの関わりでした。

吉川Ns

精神科の患者さんは、実習でしかほぼ経験がなくて。お家にいる精神科の方を、実際に目の前にして、どう関わればいいんだろう —— それが、最初は一番戸惑いました

もう一つ、入職前にはあまり想像していなかったのが、ケアマネジャーやヘルパーなど、社外の多職種と関わる機会の多さでした。けれどそれは、吉川さんにとって「良い意味でのギャップ」だったといいます。

吉川Ns

ケアマネジャーさんやヘルパーさんなど、社外の人たちともすごく関わるんですよね。そこはあまり想像していなかったところで、本当に、いい意味でのギャップというか、良かったなと思ったところです

ご利用者さんを真ん中に、さまざまな職種がつながりながら支えていく。その連携の中にこそ、訪問看護ならではの手応えがありました。

やりがいは、日々の小さな表情の中に

この仕事で一番やりがいを感じるのはどんな瞬間か。吉川さんの答えは、とても素朴で、まっすぐなものでした。

吉川Ns

普通のことなんですけど……やっぱり『ありがとう』と言ってもらえた時とか。歯磨きやお風呂のお手伝いをした後に、気持ちよさそうな表情を見られた時は、嬉しいですね

大きな出来事ではなく、日々のケアの中で生まれる、ほっとした表情のひとつひとつ。そこに、吉川さんはやりがいを見出しています。

印象に残っているご家族・ご利用者さんからの反応を伺うと、自身が管理者を務めていた頃のエピソードを話してくださいました。

吉川Ns

以前、ひばりで1年半ほど管理者をやっていたんです。でも、自分で決めて降りることにして。それをご利用者さんに説明した時に、『本当に頑張ってたよね』って言ってもらえて。驚きました

ご利用者さんからは見えにくいところで重ねていた努力。だからこそ、その言葉は深く心に残ったといいます。支える側でありながら、支えられてもいる。その関係性に、訪問看護のあたたかさがにじんでいました。

経験を重ねた今でも、初めての訪問は緊張する

長く現場に立つ吉川さんでも、いまなお緊張する場面があるそうです。

吉川Ns

初めて会うご利用者さんのところや、いつもは別の担当が行っているお宅に、私が初めて代わりに伺う時は、『嫌な思いをさせないかな』と、すごく心配になります

ご利用者さんによって、たくさん話したい方もいれば、静かに過ごしたい方もいる。どのくらい話せばいいのか、どんな距離感が心地よいのか —— その見極めは、初めての訪問では特に難しいといいます。

吉川Ns

『もう少しお話してほしかった』と、後から言われることもあって。だから、事前に担当の人から情報を聞くようにはしているんですけど、やっぱり緊張しますね

医療的な知識や技術だけではなく、その人に合わせた関わり方を考える力。経験を重ねてなお、その難しさに丁寧に向き合う姿勢が、印象的でした。

生活が見えるからこそ、踏み込みすぎない

吉川さんの語りの中で、もっとも核心にあると感じたのが、この「踏み込みすぎない」という姿勢でした。

訪問看護では、その人の生活そのものが見えてきます。食事、清潔、お部屋の環境、一日の過ごし方。医療の視点で見れば、「もう少しこうした方が体は楽になるのに」と感じる場面もあります。

吉川Ns

医療的な面で見ると、もう少し食事を変えた方がいいかな、もう少しきれいにした方が本人にとっていいのにな、と思うことはあります。提案はするんですけど、本人が『いい』と言うなら、それ以上は踏み込まないようにしています

病院との違いを、吉川さんはこう表現します。

吉川Ns

病院だと、もう全部が整えられていますけど。在宅だと、やっぱりその方の生活が見えてしまうんですよね

見えるからといって、正しさを押しつけるわけではない。代わりに吉川さんが選ぶのは、「できそうな、本当に小さなこと」を一緒に考えることです。

吉川Ns

たとえば、ジュースを控えた方がいいかもね、という時も。急にやめるのではなくて、『一日おきにしてみるのはどうですか』みたいに、小さな提案をしてみたりします

その人が望む暮らしを続けられるように。そして、少しでも体が楽になるように。その間でバランスを取りながら関わることを、吉川さんは何より大切にしています。

多職種連携で大切にしていること – 専門用語を使わない

さまざまな職種と関わる訪問看護。連携の場面で吉川さんが意識しているのは、意外なほどシンプルなことでした。

吉川Ns

専門用語は、なるべく使わないようにしています。ご利用者さんに対しても、です

言葉が伝わらなければ、安心にはつながらない。相手にとってわかりやすい言葉を選ぶこと。それが、ご利用者さんやご家族、そして多職種との信頼関係をつくる土台になっているといいます。

ひばりで働く魅力 – 看護に集中できる環境がある

吉川さんが感じるひばりの魅力。一つは、頑張った分が、目に見える形で返ってくることです。

吉川Ns

頑張った分が、お給料に反映されるのは、すごく励みになりますね

そしてもう一つ、大きな魅力として挙げてくれたのが、業務部のサポートでした。以前勤めていた訪問看護ステーションでの経験と比べながら、話してくださいました。

吉川Ns

前にいた訪問看護では、今の業務部さんがやってくださっていることを、大体自分たちでやっていたんです。カルテ整理も、請求業務も。毎月の報告書を印刷して、封筒に入れて、切手を貼って —— そういうことも全部やっていました

訪問に出ながら、事務作業もこなす。それが、いかに簡単ではないか。

吉川Ns

請求業務も、単位の計算とかもしていました。でも、それがない分、今はたくさん訪問に行ける。逆に、ご利用者さん一人ひとりに、密に関われるんです

業務部が支えてくれるからこそ、看護師は訪問とケアに集中できる。その分、目の前の一人ひとりと、しっかり向き合える。それが、ひばりで働く大きな手応えになっています。

会社の柔軟さを感じた出来事も、印象に残っているそうです。

吉川Ns

だいぶ前に、ご利用者さんと一緒に旅行に行ったことがあって。それにも、会社が本当に協力してくれて。ありがたかったです

ご利用者さんの想いを叶えるために、柔軟に動ける環境がある。それも、ひばりらしさの一つです。

一緒に働きたいのは – みんなで考えられる人

訪問看護は、ご利用者さんの家庭、医師、ケアマネジャー、ヘルパーなど、本当にさまざまな人と関わる仕事です。だからこそ、吉川さんが一緒に働きたいと話すのは、こんな人でした。

吉川Ns

本当にいろんなご家庭や、先生や、他職種の方と関わる仕事なので。固定観念にとらわれないで、想定外のことも前向きに向き合ってくれる人がいいなと思います

すぐに答えが出ないこともある。それでも —— と、吉川さんは続けます。

吉川Ns

『分かる・分からない』ではなくて、みんなで一緒に考えて働ける人がいいです

その言葉には、訪問看護を一人で抱える仕事にしない、チームで支え合う仕事にしたい、という想いがにじんでいました。

吉川Ns

ひばりは、本当に素敵な方がいっぱいいて。そう思います

訪問看護に不安を感じている方へ – 「大丈夫」と伝えたい

訪問看護や在宅に不安を感じている方へ。吉川さんは、自身の歩みを率直に明かしながら、メッセージを寄せてくれました。

吉川Ns

私、看護学校の時に全然勉強ができなくて、赤点ばっかり取っていたんです。先生からも『あなた、看護師に向いてないの』って言われたこともあって

訪問看護への転職のときにも、不安はあったといいます。けれど、ひばりには同じように不安を乗り越えてきた仲間がたくさんいる、と吉川さんは話します。

吉川Ns

今一緒に働いている看護師さんも、最初は不安だったという方をよく聞きます。だからこそ、みんな不安を乗り越えてきた人が多くて。『困っている』と発信すれば、みんな助けてくれるし、聞けば答えてくれる。だから、大丈夫だと思います

「向いていない」と言われた人が、ここでこうして看護を続けている。その事実そのものが、踏み出せずにいる誰かへの、静かな励ましになっていました。

これからひばりに入る方へ

病院とは違い、訪問看護ではご利用者さん一人ひとりと、じっくり関わることができます。

吉川Ns

赤ちゃんからお年寄りの方まで、精神科の方も含めて、本当にいろんな方がいるんです。いろんな出会いがあるので —— 飽きやすい方にも、おすすめかなと思います

そう笑いながら話す吉川さん。不安があっても、同じように不安を乗り越えてきた仲間がいる。一人で抱え込まず、チームで考えながら進んでいける。それが、ひばりで働く心強さだと、あらためて感じました。

これから挑戦したいこと、そして理想の現場

最後に、これからのことを伺いました。吉川さんがいま高めていきたいのは、「トーク力」だといいます。

吉川Ns

ご利用者さんが話したいと思った時に、話しやすい雰囲気を作れるようになりたいんです

ただ話すのが上手になることではなく、相手が話しやすい空気をつくること。その人の気持ちを、そっと引き出せる関わり。それが、吉川さんの目指す姿です。

理想の訪問看護の現場については、こう語ってくれました。

吉川Ns

ご利用者さんにとって、お家が一番リラックスできて、自分らしくいられる場所であり続けられるように。そして、職員一人ひとりが自立して、自分の裁量でのびのびと動けたら。ひばりは、そういうところがあるなと思うんです

そしてそれは、効率的に働ける環境があるからこそ実現できる、とも。

吉川Ns

デジタルツールや業務部のサポートがあって、効率的に働ける。その分、ケアの質を高めたり、ディスカッションしたりできる。そういう現場がいいなと思います

ひばりには、知識や技術、経験を持ったスタッフがたくさんいる。同行訪問をすると、「すごいな」と感じることが多いそうです。だからこそ —— と、吉川さんは前を向きます。

吉川Ns

みんなで知識を教え合う勉強会とかがあったらいいなと思いますし、そういう企画や準備にも、自分から関わっていきたいなと思っています

支えられる側から、場をつくる側へ。吉川さんのまなざしは、自分自身の成長だけでなく、チームのこれからにも向けられていました。

取材を終えて

吉川さんのお話から終始伝わってきたのは、ご利用者さんの生活を尊重しながら、そっと支えようとする姿勢でした。

訪問看護では、その人の暮らしがまるごと見えてきます。生活が見えるからこそ、気づくことがある。けれど、見えるからといって、すべてに踏み込むわけではありません。「提案はするけれど、本人がいいと言うなら、それ以上は踏み込まない」 —— この一言に、吉川さんのケア観のすべてが宿っているように感じました。正しさを押しつけるのではなく、ジュースを「一日おきに」と一緒に考える。その小さな関わりの積み重ねが、その人らしい暮らしを支えています。

もう一つ、心に残ったのは、ご自身の出発点を、まったく飾らずに語ってくださったことでした。「人の役に立ちたいという気持ちが、そんなにあったわけではない」「赤点ばかりで、向いていないと言われた」。きれいごとにしないからこそ、その後に続く「ひばりには、不安を乗り越えてきた仲間がたくさんいる」「困っていると発信すれば、みんな助けてくれる」という言葉に、確かな実感が宿ります。「一人で抱えない」が、合言葉としてではなく、現場の手触りとして語られている —— そのリアルさこそが、ひばりの「人によりそう」「人生によりそう」という理念の、もう一つの顔なのだと思います。

病院での6年、訪問看護への転職、管理者という経験、そしていままた現場の一人として —— 吉川さんは、回り道に見える一歩一歩を、すべて自分の力に変えてきた方でした。そんな経験豊かな看護師が、なお「トーク力を磨きたい」「勉強会を自分から企画したい」と前を向いている。その姿に、ひばりという場所が、専門性を発揮し、さらに伸ばしていける現場であることを、静かに教えてもらった気がします。

ご利用者さんの暮らしによりそいながら、その人らしさを大切にする。そして、不安なときには、チームで考える。吉川さんのこれからの歩みを、ひばりとしてもあたたかく見守り、応援していきたいと思います。また折に触れて、お話を伺っていきたいと思います。

ひばりで、訪問看護師として一緒に働きませんか

ひばり訪問看護ステーションでは、ご利用者さんの暮らしによりそい、その人らしい生活を支えてくださる看護師の仲間を募集しています。「病院から訪問への一歩を、自分に踏み出せるだろうか」「在宅は初めてで不安がある」 —— そんな段階のご相談から、どうぞお気軽にお寄せください。

吉川さんが話してくれたように、ひばりには、同じ不安を乗り越えてきた仲間がいます。そして、業務部のサポートやデジタルツールによって、看護師が訪問とケアに集中できる環境があります。一人で抱え込まず、チームで考えながら働ける場所です。

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取材・執筆:ひばり広報推進室 chihiro
取材協力:ひばり訪問看護ステーション 吉川Ns
※掲載写真はすべて、ご本人の同意のもと撮影しています