こんにちは、ひばり広報の chihiro です。
ひばり仙台ステーションは、2026年に言語聴覚士(ST)部門の体制を拡充し、現在3名体制でご利用者様の「食べる」「話す」を支えています。今回お話を伺うのは、その新設ST部門に加わった石川ST。前職は病院でST、いわゆる「病院から訪問へ」というキャリアの一歩を踏み出された方です。
「訪問STは一人で判断するのが怖い」「病院で培ってきた経験は活かせるのか」 —— 入職前の不安、ひばりを選んだ理由、そしていま現場で感じていることを、率直に伺いました。

「言葉を支える仕事」を選んだ原点
STを目指されたきっかけを伺うと、石川さんは少し懐かしむような表情でご家族のエピソードを話してくださいました。
今考えると、うちのおばあちゃんが失語症だったんだと思うんです。言葉がうまく出てこなくて、そこで言葉のリハビリのようなことをやっていた記憶がすごく残っていて。そこから、なんとなく『そういう仕事がある』という存在はずっと頭の中にありました
ただ、まっすぐSTを目指したわけではなく、介護の現場からキャリアをスタートされたといいます。
単位を取って大学を卒業したあと、介護の現場で仕事をしていて。その経験を経て、『言語聴覚士という仕事があるんだ』ということを改めて、しっかり知ったんですよね。それで、なってみようかなと。
ご家族の失語症という原体験と、介護の現場で見えてきた「生活の中で言葉や食事に困っている方の姿」。その二つが重なって、STという専門職への道が定まっていったのだと感じます。
訪問STを選んだ理由 – 病院では見えない『暮らし』
STとしてのキャリアを歩むなかで、訪問という領域に関心を持たれたきっかけは何だったのでしょうか。
知人が訪問でリハビリの仕事をしていて、『最近どう?』みたいな話をしたときに、『訪問は楽しいよ』と話してくれたんです。それを聞いて、楽しく仕事をしてそうな雰囲気が伝わってきて、『そういう仕事もあるんだな』と。
「楽しいよ」という、なんでもないようで、いちばん核心を突いた一言。それが、石川さんの中で「訪問」という選択肢を自然と意識するようになっていきました。
病院と訪問の違いについて、いまどう感じているかも伺いました。
やっぱり、利用者さんとの距離感が近いんですよね。ご自宅にお邪魔して、その方の生活の場でリハビリをするので、より密にというか、その方の暮らしの中に入っていく感じがあります。
学生時代の臨床実習は入院病棟が中心で、退院後の生活までは想像がつかなかった、と石川さんは振り返ります。
学生のころは本当に入院だけだったので、正直、家に帰ってからこの方がどう過ごしているのか、あまり想像がつかなかったんです。でも、実際にご自宅に伺ってみると、本当に困っていることが見つけやすい。生活の中で初めて見えてくるものがあるんだなと感じます。
「言葉や食事を支える」という仕事の輪郭が、病院のリハ室から、ご利用者の食卓やリビングへと広がっていく —— その手応えを、いま石川さんは現場で受け取られているのだと思います。

新設ST部門という挑戦 – 不安と、ワクワクと
ひばりに入職を決めた理由を伺うと、いくつかの要素が偶然に、そして自然に重なっていたことが見えてきました。
ひばりさんは規模も大きいですし、提供できる体制が第三者から見てもすごく整っているなと思いました。あと、自宅がこの近くで馴染みもありましたし、知り合いがひばりで働いていて、『すごくいい職場だよ』と話してくれていて。自分の中での評判もすごく高いところだったので、訪問でやるならひばりさんでやりたいな、というのが正直なところでした。
立地、知人からの紹介、そして体制の確かさ。冷静な検討の積み重ねの上に、もう一つ、心を動かした要素がありました —— 「新設ST部門」という、まっさらな挑戦の場であったことです。入職前、そこにはどんな気持ちがあったのでしょうか。
新しい部門に入るというのは、率直に大変そうだなと思いました。STという職種自体は世の中にもひばりにも存在していますけど、そこにまた新しい部門が立ち上がるとなると、わからないことも多いですから。
そう前置きしたうえで、石川さんはこう続けてくださいました。
ただ、しっかり作っていかなきゃならない、というのはありますし、逆に、ここから作っていくということで、楽しさだったりワクワクしている部分もあるのかなと。
「大変そう」と「ワクワクしている」が、同じ文脈で共存している —— 自然に語られるその言葉のなかに、訪問STとしての石川さんの姿勢が、ひと言で表れているように感じました。
一方で、転職前にいちばん不安だったことについても、まっすぐ話してくださいました。
もちろん、病院と訪問は形態が違いますし、何より訪問のリハビリのほうが、より広い知識が必要になると思っていました。今まで自分が培ってきた知識を、しっかり使えるのかな。そういう不安はありましたね。
「広い知識が必要」という訪問の現実と、「今まで培ってきたものを活かせるか」という自分への問い。その両方を抱えながらも、石川さんはひばりの新設ST部門に加わってくださいました。
ひばりで働く『リアル』- 一人で抱えない環境
実際に訪問の現場に立ってみて、ご自身が感じている難しさと、それをどう乗り越えているかを伺いました。
訪問STは、そもそも職種としても数が少ないんですよね。だから、何か相談したいときに『誰に、どのタイミングで相談すればいいか』の見極めが難しくて、一人で考えがちになってしまう —— そこは悩ましいところだと思います。
ただ、その「一人で考えがち」を、ひばりではチームの仕組みが受け止めている、と石川さんはいいます。
ありがたいことに、周りもしっかりサポートしてくださっていて、一緒にSTで働かせていただいている方々ともすごく仲がいいんです。密に連絡を取りながら、気軽に相談できる環境を作っていただいているので、すごく助かっています。
ST同士の連携にとどまらず、看護師や他職種との連携の手応えも現場での実感として語ってくださいました。
自分一人で抱えずに、いろんな人と共有して問題を解決していく —— それは、医療職として本当に大事なことだと思います。STとしては『食べる』『話す』の領域が大きいですけど、体の動きやご病気の状態については、看護師さんなど他職種の方にしっかり聞かないと分からないことも多くて。だからこそ、自分一人で完結させずに、相談しながら進めるのがいいなと感じています。
訪問の現場で「STがいてよかった」と感じてもらえた場面についても、印象的なエピソードを聞かせてくださいました。
ご家族とのコミュニケーションが大変、というお宅で少しアドバイスをさせていただいて。それで以前より少しでもやり取りができるようになってくると、STとしてはやりがいを感じますし、『介入してよかったな』と思える瞬間ですね。
入職前の最大の不安だった「一人で判断する怖さ」は、ひばりに入職してから、いい意味で裏切られたのではないでしょうか。「一人で抱えなくていい場所で、専門性をどう活かすか」 —— その問いに、石川さんはいま、一日一日の訪問のなかで答えを重ねていらっしゃいます。

嬉しかった「再会」- 訪問だからこそ続いていく関係
取材の冒頭、最近仕事で嬉しかったことを伺ったとき、石川さんはこんなエピソードを話してくださいました。
前の職場で一緒だった患者さんに、今回のお仕事で、訪問先で再びお会いするということがあったんです。『どうしているのかな』と思っていた方だったので、最初からの話をいろいろさせていただいて。
病院でリハビリを担当されていた方と、退院後、生活の場でまたお会いする —— 訪問という仕事には、こんなふうに関わりが続いていくこともあるのだなと、印象に残るエピソードでした。
「食べる」「話す」を支えるということ
石川さんに、ご自身の専門の意味について、改めて伺いました。
食べたり飲んだりするのは、もちろん生活の中の楽しみの一つだと思うんです。それは子供のころからご年配になっても変わらないことなので、そこをしっかり支えていくのは大事なことですし、できるかぎり口から楽しく食事を取っていただきたいなと。話す面も同じで、おしゃべりが好きだという方も多くいらっしゃるので、そういう楽しみに寄り添って支援していくのが、STとしての大事な仕事かなと思っています。
「楽しみによりそう」 —— その言葉は、ひばりが大切にしている「人によりそう」「人生によりそう」という理念と自然に重なるものでした。生きることそのものの中に、STの専門性は溶け込んでいる。そのことを、石川さんは静かな言葉でまっすぐ語ってくださいました。
訪問STとして、これから挑戦したいこと
これから挑戦したいことを伺うと、少し考えてから、こんなふうに話してくださいました。
個人的なことになりますけど、小児領域は、これまで自分があまり経験してこなかった分野なんです。子どもを見ることがほとんどなかったので、いまも勉強中で。でも、分からない分野だからこそ、そこを勉強しながら挑戦してみたいなと思っていますし、訪問では小児のSTの需要も結構多いんだということを知ったので、しっかり対応できるようになりたいなと思っています。
ひばりが地域に対して提供できるSTの幅を、石川さんは自分のキャリアと同時に広げようとされています。「分からない分野だからこそ、挑戦する」 —— この姿勢は、新設ST部門の「ここから作っていく」というスタンスとも、まっすぐつながっているように感じます。
同じように迷っているSTの方へ
最後に、訪問STに興味はあるけれど踏み出せずにいる方へのメッセージをお願いしました。
訪問は、楽しい職場だし、楽しい仕事だと思います。STってどうしても病院に就職しがちな職種だと思うんですけど、外に出てみて、実際のご利用者の生活の様子を拝見しながらリハビリをさせていただくというのは、すごい経験です。言語聴覚士として、より広く地域に出て、生活の場で問題解決に携わっていく —— そういう意味では、視野を広げるという意味で、訪問のSTは正解なんじゃないかなと、私は思います。
ご自身も同じ道を歩んでこられたからこその、「病院に就職しがち」という一言。だからこそ、「外に出てみる」というメッセージも、押し付けではなく、自然にすっと伝わってくるのだと思います。

取材を終えて
入職からおよそ3ヶ月。「新しい部門に来るのは、率直に大変そう」と語ってくださった石川さんの言葉は、決して負け惜しみでもなく、過剰な前向きさでもなく、目の前の現実をまっすぐ見据えた言葉のように感じました。その上で「ここから作っていくことで、楽しさだったり、ワクワクしている部分もある」と続けられる姿勢に、訪問STとして、そして新設部門の一員としての石川さんの存在感を、はっきりと感じました。
ご家族の失語症という原体験から始まった「言葉を支える仕事」への思いは、病院での臨床経験、介護・福祉の現場、そして訪問へと、ゆっくりと幅を広げてきました。その歩みの先で、「自宅に伺ってみると、本当に困っていることが見つけやすい」と語る石川さんの言葉は、訪問STという仕事が「病院でやっていたことの延長」ではなく、「より生活に近い距離でよりそえる仕事」であることを、静かに教えてくれます。
そして、もっとも印象に残ったのは、「STは数が少ないから、一人で考えがちになる」という訪問領域の率直な難しさを口にされたうえで、「ひばりでは、密に連絡を取って、気軽に相談できる環境を作っていただいている」と続けてくださったことでした。「一人で抱えない」という言葉が、合言葉として掲げられるのではなく、日々の連絡の取りやすさや、他職種への相談のしやすさという、現場の手触りとして語られている —— そのリアルな実感が、ひばりの「人によりそう」「人生によりそう」という理念の、もう一つの顔なのだと感じます。
そして、訪問看護のSTという、ご本人にとっては初めての領域に踏み出されているにもかかわらず、お話しいただく一つひとつの場面に、STという専門職への静かな誇りと、目の前のご利用者・ご家族に丁寧に向き合っていく姿勢がにじんでいました。新しいことに、慎重に、けれど前向きに挑戦していく —— その姿勢こそが、新設ST部門のこれからを支えていく芯になるのだと、取材を通じて感じています。
私自身も、これまでにSTの方々と関わらせていただく機会がありました。お話を伺ったり、現場に同席させていただいたりするなかで、その丁寧な支援や、ご本人・ご家族にそっと寄り添うかかわり方に触れ、この仕事のあたたかさと大切さを、折に触れて実感してきました。今回、石川さんからお聞きしたお話は、そうした記憶のひとつひとつと自然に重なる時間でもありました。
病院とはまた違う環境のなかで、新たな一歩を踏み出された石川STさんのこれからの歩みを、ひばりとしてもあたたかく見守り、応援していきたいと思います。半年後、1年後にどんな景色を見ていかれるのか、また折に触れて、お話を伺っていきたいと思います。
取材・執筆:ひばり広報推進室 chihiro
取材協力:ひばり仙台ステーション 石川さん
※掲載写真はすべて、ご本人の同意のもと撮影しています
ひばりで、訪問STとして一緒に働きませんか
ひばり仙台ステーションでは、訪問STとして地域のご利用者の「食べる」「話す」を支えてくださる仲間を募集しています。「病院から訪問への一歩が、自分にできるだろうか」「新設部門でゼロから関わるのは、自分に合っているだろうか」 —— そのような段階のご相談からでもどうぞお気軽にお寄せください。
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