地域で支援するためのHIVの知識

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3月4日に宮城県看護協会主催の研修会に参加してきました。

テーマは「地域で支援するための正しいHIV感染を学ぶ」でした。

講師は東北ブロックエイズ拠点病院となっている仙台医療センターのDrとNsとMSWの方々でした。

一見、訪問看護にはあまり関係のないテーマなのではないかと感じる方も多いと思います。(参加者も非常に少なかったです)

我々も、どのような関わり合いができるのかと初めは疑問に感じながらの参加でした。

今回学んだ内容と訪問看護での課題も含めてまとめていきたいと思います。

 

HIVには2種類あり、『HIV-1のSIVcpz(チンパンジー)由来』が世界のほぼ全てとなっています。チンパンジー由来でありますが、チンパンジーには何の影響もないウイルスだそうです。

 

HIVウイルスは非常に弱いウイルスで空気や水などに触れただけで死滅してしまいます。感染経路としては性行為・血液・母子の感染がありますがほぼ全ては性行為、特に男性同性間での性行為の割合が高いようです(7割)。性行為での感染の確率も0..03〜0.2%となっているようです。

 

現在は世界に約3700万人(日本2.6万人、東北580人)の感染者がいるようですが、感染者数も死亡率も年々低下してきているようです。

HIVの医療も非常に進歩しており、1990年代は薬が多すぎて飲みきれない時代もあったようですが、現在は1日1錠のみの場合もあるようです。

 

感染を証明するためには検査しかないようですが、この検査も100%の正確性ではなく、99.8%の精度となっています。

HIV感染症は自覚症状が急性期とAIDS期のみとなっており、急性期の症状も風邪のような症状が多く、現在の日本の環境ではなかなか急性期での診断は様々な要因で難しい状態となっているようです。慢性(無症候)期は5〜10年ありますが、この時期は読んで字のごとく何の症状も出現せず、自分では気づくことができない状態となっています。

 

つまり、

①感染しているかどうかを知るためには検査しかないが、自覚症状も風邪のような症状で自分で気づくことができず、慢性(無症候)期に入ってしまい、いきなりAIDSを発症してしまう現状がある。

②検査が100%でなく偽陽性(陰性なのに陽性の結果)がでてしまう。

→【訪問看護での問題点と対応】

 

《問題点》

知らない間にHIV感染している人と接触している可能性がある。針刺しなどがあった際、感染してしまう危険性がありHIV感染者出会った場合、早急に対応しなければならない。検査にはインフォームドコンセントが必要であり、簡単にはできないし、その結果も100%正確なものではない。

医療機関と連携し事業所単位で薬を保有していてもいいが、薬は非常に高価で3ヶ月程度で期限が切れてしまい買い換える必要性があるがそれは困難。

《対応》

針刺しなどがあった場合、すぐに服薬する必要がある。一番早い対応は利用者が服薬している薬を服用すること。こちらは、命を守るが最優先であり、おそらく問題ないと話されていました。利用者のHIVのタイプにあった薬であるため最も効果も高いのも利点。

何かあった際は拠点病院にすぐに連絡し相談する。

 

③治療薬は進歩し、治療しやすくなり平均寿命も延び一般の人と変わらない程度まで延長している。2030年にはHIVは怖くない時代が来る…?

→【訪問看護での問題点と対応】

《問題点》

HIV感染者の高齢化が進んでいく、まだ正しい理解がされていず対応医療機関も限られている現状。HIV感染者は心血管疾患・脳梗塞・癌・慢性腎臓病等になりやすく、またその確率も高く若年で発症してしまう傾向がある。

《対応》

正しい知識と対応ができる事業所・医療従事者や、地域に関わる医療機関全てが連携して行く必要性がある。

地域を支える全ての方々の意識付けからはじまることがある。

 

以上が今回の研修を通して学んだこと、気づいたことでした。

HIVの治療は高額となっており、毎月6.7万円ほどかかるようです。これを一生続けることは一般的に不可能であり、高額療養費・身体障害手帳・自立支援(更生医療)など様々な制度でのサポートもあります。HIV感染以外にも多くの問題を抱えている方もいらっしゃり、専門職が皆連携して支援していく必要性があります。